1 はじめに
  1997年5月から11月にかけて、6年ぶりに木星の衛星相互食が
起こった。このうち、好条件のものについてフォトン・カウンターで連
続測光を行い、いくつかの光度曲線を得た。これについて、現象の時刻
や減光率等について予報との比較を行った。

2.観測の方法
  現象の継続時間に合わせて、長い場合は1秒積分、短い場合は0.2
秒積分で観測した。さらに、現象の位置が木星の本体に近い場合や、食
される衛星が食を起こす衛星の近くにあって、ダイアフラム内に両方の
衛星が入りそうな場合は2倍テレプラスを用いて焦点距離を長くした。

 掩蔽の場合は隠される衛星と隠す衛星の両方をダイアフラムに入れて
測光し、食の場合は食される衛星のみを測光した。(Vフィルターを使用)
同架の望遠鏡でビデオ録画も同時に行った。
現象の前後または後にスカイの測光を行った。

3.観測者・観測地・観測機材
   観 測 者:赤澤秀彦
   観 測 地:〒710−0261
        岡山県浅口郡船穂町船穂107
        北緯=34°34′42.6″
          東経=133°42′43.3″
          海抜高度=8m
        e-mail= akazawa@sqr.or.jp
望 遠 鏡:セレストロンC−11(D=280mm F=10)
        2×テレプラス使用時F=20
測 光 器:AES製フォトンカウンター(PCPA)
  保時手段:JJYに同期
そ の 他:ビクセン20cm(F=4×2)+ビデオ

観 測 者:大倉信雄…岡山市妹尾25
        北緯=34°36′24.8″
        東経=133°40′24.4″
        海抜高度=3m
       e-mail= HAE00500@nifty.ne.jp
  望 遠 鏡:セレストロンC−14(D=355mm F=11)
測 光 器:AES製フォトンカウンター(PCPA)
保時手段:JJYに同期
そ の 他:400mm F2.8 カメラレンズ+ビデオ

4.観測結果 (赤澤)
1997/ 8/27(1E3P)20h19m30s-20h39m17s 0.2秒積分 減光率 41.1 %(テレプラス) G9708271.* N=7123 1997/ 9/ 8(3E2T)19h44m24s-20h39m17s 1 100 %(テレプラス) G9709081.* N=3872 1997/ 9/10(1O3A)25h03m26s-25h30m20s 1  33.2 % G9709101.* N=3872 1997/ 9/11(1O3P)22h59m58s-23h16m02s 0.2 29.7 % G9709111.* N=5786 1997/10/24(4O3P)18h53m57s-19h12m02s 0.2 60.8 % G9710241.* N=6507 1997/11/ 3(3O1P)19h17m56s-19h33m52s 0.2 23.3 % G9711031.* N=5742 1997/11/18(3O1P)17h26m23s-18h00m43s 1 (テレプラス) G9711181.* N=4080   11月18日の観測は、現象が木星の中心から木星の赤道半径の
2.8倍の位置で起きており、観測中に架台のピリオディックモー
ションのため木星本体の影響が現れてしまった。

5.得られた光度曲線(赤澤)

測光中のカウントのダウンは、視野確認のためのダイヤフラム切り替えと
食のあとのスカイの測定データである。


1997年8月27日


1997年9月11日


1997年10月24日


1997年11月3日


6.予報との比較(赤澤)
得られたデータをグラフ化し,現象の概略の時刻を求めた。食の開始、
終了の時刻をグラフから決定するのは難しく、±0.2分前後の誤差を
含み,食の中心時刻の決定においても±0.1分程度の誤差があるもの
と思われる。食の開始・終了は予報時刻に対して1〜2分のずれの範囲
で起こった。食の中心時刻は予報に対して1分以内のずれにおさまった。

9月8日の3E2Tでは約2.3分間の皆既が観測された。 これは、
予報0.6分よりかなり長いものである。
  食の減光率については、予報とのずれは数%の範囲であった。しかし、
9月10日(1O3A)は予報減光率24%に対し33.2%,9月11日
(1O3P)は予報減光率10%に対し29.7%であったが、これらはい
ずれも大気によるの減光の影響を大きく受けているものと思われる。
(天候・低空など)

7.協同観測者とその観測
大倉氏の観測 │ 年 /月/日│現象│ 測 光 時 間 │ データ数│ 積分時間 │ 食の中心時刻 │
│1997/07/04│ 3O2│23:33:42-23:55:54 │N=7995│0.2 s │23:43:31│
│1997/08/23│ 3O2│21:19:01-21:41:02 │N=7929│0.2 s │21:29:56│
│1997/08/27│ 1E3│20:18:42-20:41:58 │N=8376│0.2 s │20:29:16│
│1997/09/04│ 1E3│22:04:05-22:25:09 │N=7582│0.2 s │22:13:03│
│1997/09/08│ 3E2│19:50:20-20:21:24 │N=3728│1.0 S │20:04:23│
│1997/09/11│ 1O3│25:00:00-25:29:46 │N=3571│1.0 s │25:17:25│
│1997/11/03│ 3O1│19:13:45-19:37:19 │N=2829│1.0 s │19:27:38│

8.おわりに
 今回観測したデータは国立天文台 相馬 充氏と掩蔽観測グループの広瀬敏夫氏に
送付しました。また、広瀬氏よりフランスとアメリカI.O.T.A.のダナム氏に転送され
公開されているようです。
ガリレオ衛星相互食の測光結果につきましては、現在までのところ専門的な解析は
なされておりません。我々自身では、得られたデータと予報との比較や衛星相互食の
シミュレーションとの比較等を勤務校の中学生といっしょにやっていきたいと考えて
います。
  他にこの測光結果を活用していただける方があれば、データは公開していきたいと
考えていますので、よろしくお願いします。
  最後に、予報および資料の提供をいただいた両氏にこの場をかりて謝意を表します。

           参考文献  天文観測年表1997 地人書館
                 天文年鑑1997   誠文堂新光社


H.Akazawa

戻る