木蘭詩(もくらんし mulanshi)
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詩吟の特徴(ここでは,@旋律動向は言葉のイントネーションに従うA旋律のフレーズと言葉のまとまりが一致するー従って拍をもたない音楽となるーをもつ,ものとした)創作曲を和洋のジャンルを問わず作曲家に委嘱し上演する試みの第3作として,1998年10月に初演したもの。
詞は中国漢代の作者不詳の物語詩,作曲は神坂真理子による。
原作の持つ民謡調の雰囲気を生かすため原語(標準中国語)で上演した。河田千春が吟じるとともに,木蘭役を演じ(少女→戦士→妙齢の女性へ),舞った。
〈あらすじ〉
木蘭は、中国の古い民話に登場する少女の名前です。木蘭は中国語で「ムーラン」といいます。
あるときムーランの父親に徴兵の命令が下りました。父親は年老いているし、替わって出征するような兄はいません。ムーランは勇敢にも、父に替わって自分が男装して出征する決意をします。
戦場は遠く荒涼たるモンゴルの地。ムーランは一人,黄河を逆上っていきます。心細さに耳をすましても、聞こえるのは黄河の流れ、馬のいななき。懐かしい両親の声は届きません。
ところがムーラン,いったん戦場に立つと、強いのなんの!激戦を勝ち抜くこと十年、不死身のムーラン。
国王は悦んでムーランに謁見し、一足飛びに十二階級昇級。千を越える品々を贈って、更に尋ねます。
「ムーランよ、望みの品を言うてみよ!」
ムーラン答えて
「地位も名誉もいりません。ただ1つの望みは,千里の馬に乗り早く故郷に帰ること」 めでたく故郷に帰ったムーランを,両親と姉とすっかり大人らしくなった弟が迎えます。
さてムーラン、これでやっと女性の姿に戻れます。戦衣を脱ぎ以前の女らしい服を身にまとい、紅さし化粧して、変身!
表にでると、長年一緒に過ごした同僚の兵士たちがびっくりしてしまいました。
「えー!ムーランって女だったのー!?」
勇敢で美しい少女ムーランの大活劇です。
〈初演にあたっての作曲者の言葉ープログラムよりー〉
♪私が『木蘭詩』を作曲する事になったわけ♪
神坂真理子(98年10月2日)
それはちょうど一年前の「小さなコンサート」で『赤壁賦』という百行からなる詩吟を作曲するという、今思えば大変に無謀な体験を終え、まだその時の興奮さめやらぬ次の年の初め、河田千春さんよりポンと手渡されたテキストがこの「木蘭詩」でした。
というのも先ほどのコンサートの中で、千春さんが歌った中国語の詩吟が大変印象的で、一体この人の前世は中国人だったのかしらと思えるほどで、むしろ日本語の漢詩を吟ずる以上に生き生きしていたので、すっかり聴きほれてしまい、「今度は中国語の詩吟を作曲してみたい!」などと、またしても無防備に口にしたのが発端でした。
かくして今だ詩吟の何たるかもおぼつかない私がさらにそれを中国語で作るという雲をつかむような仕事をお引き受けする事になったわけです。
作曲するにあたっての唯一の頼りは、一本のカセットテープ。それは千春さん自ら朗読した「木蘭詩」でした。その美しい中国語を聴いたとたん、私の内ではじけるようにイメージがふくらみはじめました。千春さんが長年あたためてきたこの「木蘭詩」が、期せずして、同じ「木蘭」を扱ったディズニーアニメ『ムーラン』の封切りと重なりました。これも何かの不思議な導きのようにも思えます。
最後になりましたが、千春さんはじめ、作曲者の無理な注文にも快く応じて下さった演奏家の方々、振りを付けて下さった後藤田先生、そしてスタッフの皆様方に心より感謝いたします。