音楽あれこれ

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§∞§和声と楽式のアナリーゼから備忘録2000/10/23 2003/11/28
独立楽曲2003/01
バッハの思いで アンナ・マグダレーナ・バッハ2004/09/22

パユの演奏会2000/11
ランパルの死 2000/7/18
フレージングとアーティキュレーション2000/3/22









































バッハの思いで アンナ・マグダレーナ・バッハ2004/09/22
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バッハの思い出
 アンナ・マグダレーナ・バッハ 山下肇訳 ダヴィット社 1967年

古い本です.でも,アンナの愛情は「一ひらの貝殻で海をとらえることができた」 と訳者が書いているように,アンナの愛情はバッハをしっかりととらえています. 小林秀雄がこの訳書を褒めたとのことですが,彼が言わずともすばらしいものはすばらしい.

なかから,気になった文言を連ねて,バッハに近づきたい(これがうるさく思われたら本書をひもといてほしい)

目次
1.めぐりあい
2.その日まで
3.なつかしいバッハ
4.ライプツィヒ
5.晩年
6.バッハの音楽
7.終焉


1.めぐりあい
弟子の一人,カスパールがアンナに「先生のお言葉,先生の眼,先生の生活, 先生の音楽,それを書くのです」
弟子に,B「君が僕くらい努力家なら,君だって僕程度に弾けるようになるさ」
B「なにも驚くことにはあたらないよ!ただ正しい譜を正しい瞬間にたたけばいいだけの話じゃないか. あとはオルガンがしてくれるんだ」

2.その日まで
粉屋でパン焼きだった彼の大曾祖父ファイト・バッハは水車小屋で,ギターを抱えてひいていた. B「きっとうまく調子が合ったことだろうよ」
セバスチャンの父母は早くなくなり長兄のヨハン・クリストフ・バッハのもとに身を寄せた.
小さい頃,セバスチャンは美しいソプラノの持ち主だった.だが途中変声して, 自分の声が完全なオクターブで聞こえるようになった.
彼はあらゆる楽器の天才で,ヴァイオリン,ヴィオラ,スピネット, クラヴィコード,チェムバロ,ヴィオラ・ポンポーザ,特にオルガンをこなした.
アンナ;「彼こそは音楽家の中のみならず人間の王者なのだからどんな王様よりえらい・・・」

Bある婦人に,「マダム,法も秩序もなく,義務の履行もなく,正当な上司に対する服従もなくて, その名に値するような愛だの美だのなんていうものは,どこにもありゃしませんよ」
B「オルガンの音色の特質は音調の厳粛さと高雅な気品にある」
「もろびとなべて死すべきもの」
アンナ;セバスチャンのこよなく高貴な音楽はいつも死を思う心によって呼び出される
アンナ;ヘンデル様のお近づきになろうとしたが,できなかった.

3.なつかしいバッハ
彼はわたしの経験で申しますなら,一番宗教的な人でした.
アンナ;全生涯を通じて彼につきまとっていた灼熱的な欲求,即ち,死を願う心でした.
アンナ;彼のこよなく気高い音楽は,復活せる救世主の幻影を描きつつ, 彼の心から遁れてゆく,死をあこがれる叫びにほかなりません.
B「不協和音は和音の近くにあるほどそれだけ強いものだ, だから夫婦の不和というものは一番耐え難いものなのだ」
アンナ;彼は浪費を憎しみ,また几帳面でないことを嫌いました.

結婚してまもないころ,一冊の音楽帳をくれました.
妻アンナ・マグダレーナ・バッハに贈る
クラヴィーア小曲集1722年

B「いちいち間違ってやしなかと見て確かめなければ鍵盤が押せないなんて,もってのほかだよ」
アンナ;趾の下への親指の自然交叉とよばれていることを最初に応用した人でした.
フリーデマンのために二声や三声のためのインヴェンション書いた.
アンナ;ヴィオラ・ポンポーザを作らせた.バイオリンとチェロのあいのこのようなもの.
アンナ;彼は合奏ではヴィオラを選んだ.

4.ライプツィヒ
アンナ;何を好んでザクセンを離れてあの陰鬱な島へ島流しになりに行くのか, ヘンデル様がその地でたいへんお金儲けなさったことは存じています
アンナ;そう度々ではないが12小節もかいて唸り声をあげ, 書いた作品を鷲ペンでめちゃめちゃに消してしまうことがありました.
アンナ;彼が亡くなったとき,チェンバロとクラヴィコードをあわせて5つ, クラヴィチェンバロを2つ,スピネット1つ,ヴァイオリン小1,大2, ヴィオラ3つ,チェロ2つ,バスヴィオラ1つ,ピッコロ1つ,ギター1つもっていた.
アンナ;あらゆる楽器の中でオルガンの次ぎに好きだったのはクラヴィコードです. チェンバロやキールフリューゲルよりも.
アンナ;友のジルバーマンがピアノフォルテの製造開始したのに関心を寄せ,意見を言った.
ある生徒が,「先生は僕たちの心に火をつけます」「そして,世界中の音楽がみんな僕には,先生の声に聞こえます」
生徒;先生が突然授業を中止して,クラヴィーアかオルガンにむかって,即興の演奏に浸り始める
アンナ;弟子たちに四声の対位法から始めさせる.良い二声や三声はそうでないと書けない.
B「ゼネラルバスは音楽のもっとも完全な基礎である」
アンナ;彼が即興に書いているとき,特にオルガンで彼の胸から流れ出た 気高い音楽の数々は一度限りほとばしり出たもので,宇宙のハーモニーの中に消え去ってしまいました.
アンナ;数学の助けをかりたことはなかった.かれは音の本質について,もともと直感的な認識を持っていました.

5.晩年
アンナ;13人の子供の内,7人まで失った.お年寄りが,抱いた子の半分さえ育て上げることが, それで幸せしなければと言われた.
アンナ;バッハはルターの「愛しき我が子レナよ,汝いまいかばかりか幸福ならん. 汝ふたたびまたよみがえりて,星のごと,いな太陽のごとく光り輝くべし, さわれ,汝の幸福と平和を知りながら,なおかくも悲しきことの奇(くす)しき 運命(さだめ)や!」と,その言葉を読んで聞かせた.
アンナ;セバスチャンの余暇の一つに「バッハ家文庫」の蒐集があります. 彼は家という感情を強く持っていて,バッハといえば同じ精神的傾向と 共通な祖先に結ばれている人間のことでした.
アンナ;・・・あの協奏曲は,三つのクラヴィコードのために書いたもので, フリーデマンとエマヌエルと3人で家庭演奏をした.
アンナ;末っ子のヨハン・クリスチャンは,セバスチャンが死んだとき15才で, 父から三台のペダル附きピアノを贈られた.この時,彼は50才.

6.バッハの音楽
アンナ;彼はとりわけ有利な手を有していて,左手を12の鍵幅にひろげ, その中指3本を用い,中間部にて快速調の連続音を奏することができた.
コーヒー・カンタータ・・・我が家ではこの演奏が楽しみでした.
アンナ;流行歌を取り入れて歌を作曲して,子供達が歌いまくった.それを聞いて, バッハは黙らそうとしたら,「でも,お父さん,自分が作ったくせして!」と娘に言われて, バッハは娘の耳を引っ張り「お父さんは音, 自分の作ったもので,死ぬほど苦しめられたくはないんだよ」
アンナ;・・・晩年の彼は,自分でも特別の価値を認めている作品を, 常に新たに推敲し彫琢するために,多くの時間を費やしていました.
B;「ほんとうの音楽を,われわれはただ,おしはかるだけなのだ」

7.終焉
アンナ;彼には,人生の最大の希望は,いつかはこの世を去ることができ, 彼の長みて愛しまつる救い主のもとへ行くことなのだ,ということを意識する ひとときがしばしばあったことを,私は知っている
2004/09/21





















独立楽曲2003/01
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楽式論
石桁真礼生(いしけたまれお)
音楽之友社
; (楽式論より,独立楽曲などについて抜粋,概略を記述します)
; リズムの刻みの表現として,2分音符;ww 4分音符;w 8分音符;v 16分音符;i
; 小節腺;I アクセント;^ を利用します.

;;独立楽曲;;

序曲(オーバーチュア Overture)  前奏曲(プレリュード Prelude)
間奏曲(インテルメッツォ Interumezzo)  即興曲(アンプロンプテュ Impromptu)
練習曲(エチュード Etude)  ノクターン(夜曲・夜想曲 Nocturn)
バラーデ(譚詩:たんし Ballade)  レゲンデ(聖譚詩 Legende)
ロマンス(Romance)  ノヴァレッテ(Novellette)
ラプソディー(史詩 Rhapsody)  スケルツォ(Scherzo)
カプリッチォ(狂想曲 Capriccio)  ブルレスケ(Burleske)
ユゥモレスク(Humorsque)  バガテール(Bagatelle)
無言歌(リート・オーネ・ヴォルテ Lied ohne Worte)  楽興の時(モーメント・ミュージカル Moment Musical)
幻想曲(ファンタジア Fantasia)  トッカータ(Toccata)
インヴェンション(Invention)  アリア(Aria)


;;舞曲と行進曲;;

ワルツ(円舞曲 Waltz)  ポロネーズ(Polonaise)
マズルカ(Mazurka)  メヌエット(Minuetto)
ミュゼット(Musette)  ガヴォット(Gavotto)
タランテラ(Tarantella)  パストラール(Pastorale),シチリアーナ(Siciliana)
ポルカ(Polka)  エスメラルダ(Esmeralda) ガロップ(Galopp)  エコセイズ(Ecossaise)
アルマンド(Allemande)  クウラント(Courante)
ジーグ(Gigue),カナリー(Canarie)  ルーレ(Loure)
ブーレ(Bourree)  サラバンド(Sarabande)
シャコンヌ(Chaconne),パッサカリア(Passacalia)  パスピエ(Passepied)
ボレロ(Bolero),カチュチャ(Cachucha),ファンダンゴ(Fandango),セギディラ(Seguidilla)
バレー(Ballet)  行進曲(March)



;;独立楽曲;;

序曲(オーバーチュア Overture)
序曲(Overture)はオペラやオラトリオなどの大曲や,またのちには組曲などの 前に演奏される楽曲(器楽曲,特にオーケストラによる)

前奏曲(プレリュード Prelude)
ある主要な楽曲の前に奏される小曲

間奏曲(インテルメッツォ Interumezzo)
間奏曲(Interumezzo)は他の楽曲の間に挿入される器楽の小曲

即興曲(アンプロンプテュ Impromptu)
必ずしも即興的ではない.だいたい複合3部形式によっている (シューベルト Op.92の2 即興曲)

練習曲(エチュード Etude)
練習曲(Etude)は本来演奏技巧を練習するための楽曲(全く 芸術作品として存在するものもある:ショパンの27曲の練習曲など)

ノクターン(夜曲・夜想曲 Nocturn)
ノクターンは静かな抒情に溢れた主楽節と,やや激情的な中間楽節から なることが多い.(ショパン・ノクターン Op.9の2)

バラーデ(譚詩:たんし Ballade)
譚(はなし)という訳語のように音楽による物語.叙事的な想念を念頭において 作られたと考えることができる(ショパン・バラーデOp38)

レゲンデ(聖譚詩 Legende)
キリスト教の聖者の,その敬虔な行為と驚異に満ちたその偉大さを 伝えるもの.

ロマンス(Romance)
元々は譚詩的な内容をもつとされているが,実際にはロマンティックな 曲想をもつ自由な形の楽曲と考えて良い(ベートーベンのバイオリンのための曲)

ノヴァレッテ(Novellette)
ノヴァレッテも前3者と同様譚詩的な内容をもっているが,バラーデ などよりは,もっと繊細で,曲の迫力も淡い感じがする

ラプソディー(史詩 Rhapsody)
ラプソディーもまた,前4者と同様譚詩的な内容をもち,かつ,ある種の 民族史的なふんい気をだしている.(リストのハンガリアンラプソディ)

スケルツォ(Scherzo)
曲想としては,3拍子が多く速いテンポで1小節一拍となっている. 技巧的なシンコペーションが多く,異常な迫力と,ある場合は軽い悦び, ある場合は諧謔,ある場合は痺痛さえも含まれている. だいたい複合3部形式によっている

カプリッチォ(狂想曲 Capriccio)
気まぐれな即興的な曲想をもつ小曲.リムスキーコルサコフ「スペイン狂想曲」, リヒアルト・シュトラウス「ティル・オイレンシュピーゲルの悪戯」も一種の 大規模なカプリッチォ

ブルレスケ(Burleske)
スケルツォに似た曲想と形式.もっと粗野で,あらけずりで,しかももっと 快活.

ユゥモレスク(Humorsque)
ユゥモレスクは前者と同様ですが,ユーモアに満ち,しかもその中に 美しい抒情味をもった曲.ドヴォルザーク「ユゥモレスク」 複合3部形式.

バガテール(Bagatelle)
バガテールは小さい曲の意味.

無言歌(リート・オーネ・ヴォルテ Lied ohne Worte)
歌詞のない歌曲,すなわち,器楽による楽曲.メンデルスゾーン「春の歌」

楽興の時(モーメント・ミュージカル Moment Musical)
音楽的瞬間. 即興曲と同じく,気軽な自由な曲想をもつ小曲.シューベルト

幻想曲(ファンタジア Fantasia)
幻想曲は,一定の形式をもたない,字義通り幻想的な楽曲をいう.ある種の定型 があるとの異論もある.古くは前奏曲と同様の使い方をされた.バッハ「半音階的幻想曲とフーガ」 次々と主題を連続させる寄せ木細工式のものと,統一式のものとにわけられる

トッカータ(Toccata)
トッカータとは,「触れる」という意味.有鍵楽器の鍵盤に触れるといことで, 前奏曲と同様の性格を持っている.

インヴェンション(Invention)
インヴェンションは,「発見する」の意味がある.「対位法的作法による即興曲」 というのがその定義のようである.バッハ

アリア(Aria)
アリアはもともと声楽曲ですが,器楽曲にもいわれる.メロディーと同義.自由な歌曲形式



;;舞曲と行進曲;;

ワルツ(円舞曲 Waltz)  ポロネーズ(Polonaise)
マズルカ(Mazurka)  メヌエット(Minuetto)
ミュゼット(Musette)  ガヴォット(Gavotto)
タランテラ(Tarantella)  パストラール(Pastorale),シチリアーナ(Siciliana)
ポルカ(Polka)  エスメラルダ(Esmeralda) ガロップ(Galopp)  エコセイズ(Ecossaise)
アルマンド(Allemande)  クウラント(Courante)
ジーグ(Gigue),カナリー(Canarie)  ルーレ(Loure)
ブーレ(Bourree)  サラバンド(Sarabande)
シャコンヌ(Chaconne),パッサカリア(Passacalia)  パスピエ(Passepied)
ボレロ(Bolero),カチュチャ(Cachucha),ファンダンゴ(Fandango),セギディラ(Seguidilla)
バレー(Ballet)  行進曲(March)


ワルツ(円舞曲 Waltz)
もともとドイツ舞曲(レントレル Laendler)から進化したもので, それが速度とはなやかさを加えたもの.明瞭に1拍目にアクセントをもち,1小節1拍 のリズムをもつ.4部音符が3つ.
 w^ w w I w^ w w
ウインナワルツは,1拍目は2分音符,3拍目1分音符となっていて 多少違う.
 ww w I ww w I

ポロネーズ(Polonaise)
ポーランドに起こった舞曲.拍子は3/4で,そうとうゆっくりした拍節. きわめて明快な小節律動と,しばしばあわられるシンコペーションを伴った, しかも急速に進行する自由なメロディーと,頻繁なアクセントとf・pの急激な 変化などの,相当男性的な強烈さが曲想上での特色.
リズムの上では,必ず強迫に始まることと,最終の音が最弱泊たる第3拍目にとどまること.

マズルカ(Mazurka)
ポーランドの3/4拍子の舞曲ですが,一体に野趣と素朴な哀愁をもっている. その第1拍目のリズムに特色があります.アクセントは 好んで第3拍目に与えられる.
 vi i w^ w I vi i ww ^  
ここでは,最初の小節では2拍目,次は3拍目にアクセントがある. また,マズルカでは3拍目から始まることが多い

メヌエット(Minuetto)
16世紀頃から,フランスに起こった舞曲.曲想は典雅で,テンポも決して 速くはない.第2拍目にあまり強烈でないアクセントがある.近世では 複合3部形式によっている.トリオをもつ.ソナタ構造をもつ他楽章からなる楽曲の 一つの楽章として用いられることが多い.ベートーベン以後はスケルツォが多い

ミュゼット(Musette)
ある袋ものの楽器の名から,その楽器で演奏する舞曲を指す.オルゲルプンクト(保続音)を 持っていることに特色がある.牧歌的な曲想で,3/4拍子

ガヴォット(Gavotto)
16世紀にフランスに起こった舞曲.拍子は2拍子(2/2 か 2/4)で, 普通半小節の弱起に始まり,やや速めのテンポで,明快な曲想のものが多い.
w w I w w w w I ww
ガヴォットもメヌエットと同様に,トリオにミュゼットの手法(オルゲルプンクト) が使われることが多い

タランテラ(Tarantella)
イタリア,ナポリ地方の民舞.拍子は6/8(3/8もある)で, テンポの速い熱狂的な舞曲.
 v I v v v v I v v v v I vvv
以上のようなテンポが多く見られる.

パストラール(Pastorale),シチリアーナ(Siciliana)
パストラールは牧歌だが,舞曲の一つでもる.6/8の素朴なリズムで,中庸をえたテンポ. イタリアのシシリア島の農民の舞曲であるシチリアーナは,パストラールの一つ

ポルカ(Polka)
ポーランドやボヘミアの舞曲.拍子は2/4でテンポは速い
 v I iiii v v I iiii v v
下属調のトリオを持つ複合3部形式が普通. エスメラルダ(Esmeralda) はポルカの一種です.

ガロップ(Galopp)
19世紀のフランスの舞曲で,ポルカに類似しているが弱起ではないのが普通

エコセイズ(Ecossaise)
ポルカと相似の舞曲.3/4拍子だったのが近代になって2拍子 なったと言われる.

アルマンド(Allemande)
ドイツでおこり,フランスでも行われた舞曲.拍子は4/4で中庸の速度. 古典の組曲の冒頭に好んで置かれる.16分音符(時に8部)が上拍に現れる.

クウラント(Courante)
フランスに起こった舞曲.3/4あるいは3/2などの3拍子.テンポは速い.走るように. 短い音符の上拍で始まる.

ジーグ(Gigue),カナリー(Canarie)
イギリスで起こったと言われる3拍子系の速い舞曲.好んで組曲の終曲として選ばれる. アルマンドと共に組曲の首尾を飾る.様式は好んでフガートが用いられる. カナリーは,ジーグと類似の舞曲.

ルーレ(Loure)
ジーグの緩徐なテンポによる舞曲.フガートも同じ

ブーレ(Bourree)
ブーレはフランスの舞曲.拍子は2/2.ガボットに似るが 上拍が2分音符でなく4分音符.複合3部形式.トリオは「第2のブーレ」と 呼ばれる.

サラバンド(Sarabande)
主にスペインで行われた舞曲.3拍子でテンポが遅く,堂々とした曲想を持つ.
 w wv v I w ww I というリズムが多い

シャコンヌ(Chaconne),パッサカリア(Passacalia)
シャコンヌは一定の低音主題(普通8小節)が反復される間,たえず高音にオブリカートが 変形されながら作りつけられた一種の変奏曲.舞曲だが,定まった拍子やリズムや曲想を 必用としない.やや緩徐なテンポを有している.パッサカリア もこれと全く同様

パスピエ(Passepied)
フランスの舞曲.3/8または6/8.8分音符1個の上拍によって 開始される.「前進する足」.ロンド風で,第1パスピエ,だい2パスピエとつくられ ,第2がトリオの役をする.

ボレロ(Bolero),カチュチャ(Cachucha),ファンダンゴ(Fandango),セギディラ(Seguidilla)
ボレロはスペインの舞曲で,3/4拍子でテンポはゆっくり.
 v I v 32*4 v 32*4 v v I v 32*4 v 32*4 v (32は,32分音符)
カチュチャ,ファンダンゴ,セギディラ はみなボレロと同種の舞曲

バレー(Ballet)
オペラの間に間奏曲を挿入するように,舞台で演じられる幻想的な舞踊を伴った音楽. また,オペラとは独立した「黙劇」に付随する舞踊音楽もある

行進曲(March)
行列して行進する人々を音楽の律動で,堂々と,軽快に,粛然とさせるための音楽. 形式は複合3部形式で,明快なトリオを持つ.D.Cによって繰り返される.トリオは 好んで下属調や平行調に作られる.主題に先行してファンファーレ がしばしばみられる.シューベルトの軍隊行進曲

2003/01//22








パユの演奏会2000/11
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2000/11/9 パユ
2000年11月4日,玉島文化センターで,パユというフルート吹きの演奏 をききました.彼は1970年生まれ,史上最年少でベルリンフィル主席ソロ 奏者になり最近独立したとのことである.ランパル,ラリュー等をきいたこと があるが,とんでもなく名手です.信じられませんでした.音の美しさ,テク ニックのすごさ,音楽の品位,作曲者の意図を表現する能力など,ただもので はありません.これは,バイオリンをしのいだかな.あのポゴレリッチのピア ノ以来の感激です.

プログラムはフランスもので,
ドビュッシー,牧神の午後への前奏曲(フルートとピアノの編曲版)
出だしは演奏の常で,多少音造りに向かう途中のため堅かったが,しばらくすると初 めて聞く柔らかく,雑音のないダイナミックスの非常に大きい笛の音が聞こえ だした.

同じく,パンの笛(シリンクス)
最後の5連譜の最後の音がピアニシシモでその音が無限に続いた.クラリネット に負けない,ピアニシシモ.

  同じく,ピリティスの歌
これは,元来,FL2本,2台のハープ,チェレスタのための曲をフルートと ピアノに編曲したもの.これぞ,フランスのエスプリ,所々日本風のメロディ ーをかなでる.

  後半は,
ブーレーズ,ソナティネ
なんと,ブーレーズの難曲の中でF(4点)を吹いた.(芸文館の小林さんに よると4点Fとのこと)12音階技法の難解で,難曲である.さすがのパユも 楽譜にしがみついていた.しかし,フルートの魅力,能力をバイオリンにまけ ないまでに引き上げたのはすごい.

プロコフィエフ,フルートソナタ ニ長調.
プロコフィエフの魅力があふれる曲ですがこれを見事に表現し,すべての聴衆 をその世界へ引き込んでいる.恐らく生まれて初めて感じたプロコフィエフの 世界.プログラム解説では,プロコフィエフはフランスで長らく活躍したから フランスものとして曲目をくんだと書いてあるがさもありなん.

2000/8/26
9月4日はクラシック音楽の日だそうです.
誰が決めたのでしょうね.
気になりますので,調べたいと思います.







ランパルの死
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2000/7/18
ランパルの死
5月20日ランパルが心臓発作のため死去されました.
享年78才.
愛弟子の工藤重典さんが,音楽の友の中で20世紀において フルートの地位を高めた人と語っています.
30年ほど前の,ニコレと競演した二重奏のレコードは名演として 今でも愛聴しています.いつものランパルならテクニックをもてあまし 気味だったのがニコレとの競演で音楽が躍動し,音楽が深くなっていく のが感じられます.








フレージングとアーティキュレーション
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2000/3/22
フレージングとアーティキュレーション:ヘルマン・ケラー
 生きた演奏のための基礎文法    :植村耕三,福田達夫共訳,音楽之友社

感想として,特にバッハをやるときには演奏会の前に一度は読んでおくべきだなと. このコンピュータの時代ですから,楽譜から音がでるように誰かやってくれないだ ろうか.そうすれば,読譜が完璧にできない我々にも読みやすくなるのだが.







和製と楽式のアナリーゼ2000/10/23 2003/11/28
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2000/10/23 2001/2/1
和製と楽式のアナリーゼ 嶋岡譲著/音楽之友社

学生の頃から一度は和声を勉強せねばと思っていてやっと読むことができた. こういう内容だったら若いときによんどけばよかったと悔やんでしまった. 是非アマチュアオーケストラの若い人たちに読んでいてほしい.


和声と楽式のアナリーゼから備忘録
嶋岡譲著/音楽之友社 1964/7

2000/10/23
特に和声を学習し習得するための備忘録.五線譜は頭で考える.コンピュータに五線譜を入力するのは 難しいのでそれを逆手にとって頭で五線譜をイメージして覚える手段とする.いわゆるイメージトレーニング.


1.旋律と和声.
2.和音
3.和音の組み立て
4.和音の分析
5.分散和音
6.非和声音
7.カデンツの第1型(T−>D−>T)
8.カデンツの第3型(T−>S−>T)
9.2部形式の曲(単純2部形式)
10.3部形式の曲(単純3部形式)

11.2部形式と3部形式との違い
12.コーダ
13.カデンツの第2型(T−>S−>D−>T)
14.低音位(基本位置と展開位置)
15.DとしてのT2(上付)V
16.SとしてのU
17.主音の保続音(ホ)
18.非和声音のつづき
19.近親調
20.同主調(同名調)

21.転調
22.複合3部形式.
23.TとしてのY
24.各種のD和音
25.各種のS和音.
26.終止(和声の句とう点)
27.非和声音のおぎない
28.ロンド形式
29.ソナタ形式
30.ソナタ形式分析の要領

31.借用和音
32.Sとしてのv/V(前項参照)
33.v/Vの和音の下方偏位(kv/V)  ;kは下方偏位の記号の代わり(正書参照)
34.ナポリのU(−U)
35.ドリアのW(+W)
36.X和音の上方偏位(jX) jは上方変位記号の代わり(正書参照)
37.各音度の5度関連
38.偶成和音
39.主音上のX
40.属音の保続音(17.参照のこと)

41.変奏曲
42.ソナタ形式のまとめ
43.ロンド形式のまとめ
44.楽曲としてのソナタ
45.各種演奏形式におけるソナタ


1.旋律と和声.
旋律ほど目立たないが,これ以上に重要な和声.
いろいろな音が同時に響き,ある時は解け合い,あるときは互いに反発している −>いろいろな音の響き合いが和声である.

2.和音
同時に組み合わせることのできる音をひとまとめにして覚えやすい形にしたものが和音 である.


3.和音の組み立て
(1)3和音(ドミソ)
完全な意味での和音を組み立てるには,少なくとも3個の音が必要. 3度の間隔で積み重ねられる.一番低い音から根音,第3音,第5音. 音階の各音はいずれも根音となってその上に3和音を組み立てられる. 音階の第1音(主音)はT度,ついでU度,V,−−−Z度と呼ぶ. 根音の音度によってT度の3和音,U度の−−−Z度の3和音となる.

(2)7の和音(ドミソシ)
3和音の上に,さらに3度高い音を積み重ねると7の和音ができる. 根音より7度高い4番目の音は第7音という.

4.和音の分析
1)実際の和音は,かならずしも原型どうりの形をしているとは限らない. しかし,いつでも原型と同じ音度の音だけから成り立っている.
2)和音分析にて,同じ音度の音はいくつあっても,ひとつとみなす. T,X,X7 の3つは一番頻繁に用いられる.

5.分散和音
ピアノ曲では,左手の伴奏で和音を分散させることがある. これを分散和音という.和音が同時に響いていない.

6.非和声音
(1)非和声音.
和音の構成音でない音.
(2)経過音(カ)
2個の和声音の間を音階的につなぎ合わす非和声音を経過音(カと略記)と呼ぶ. 経過音は,弱泊または拍の弱部で用いられる.
(3)刺しゅう音(シ)
経過音の中でももっとも多く用いられる非和声音
「2個の同じ高さの和声音の中間にはさまれた隣接音度の非和声音」 刺しゅう音も,弱泊または拍の弱部で用いられる. 下側にある刺しゅう音は臨時記号で半音高めることが多い.

7.カデンツの第1型(T−>D−>T)
Tは安定した感じをもっている.曲の初めと終わりにはいつでもTが用いられる.
X(X7)は,不安定な感じをもっている.
安定した状態をトニックといい,Tという記号で表す.
不安定な状態をドミナントといい,Dという記号で表す.
安定(T)から不安定(D),また安定(T)という振り子の運動は和声の基本的な 原理である.
このような和声の運動をカデンツという.

8.カデンツの第3型(T−>S−>T)
やさしい女性的な感じのWと,ひきしまった男性的なX.
このような「Xとは対照的な意味での不安定性」をサブドミナント(S)という.

9.2部形式の曲(単純2部形式)
楽式:楽式とは「楽曲の形式」のことである.
「同じ比重をもつ二つの対照的な部分から成り立っている曲」を2部形式の曲という.
A(a+a’)B(b+a’)という形を取ることが多い.

10.3部形式の曲(単純3部形式)
2部形式に劣らず多い.
「三つの部分から成り立っている曲」を3部形式の曲という.
 A+B+A
「ほぼ同一の二つの部分の中間に一個の対照的な部分がはさまっている型」

11.2部形式と3部形式との違い
くりかえしの部分(A(a+a’)B(b+a’)のa’のこと)が 最初の半分の長さしかないときには2部形式と考えてよい.
くりかえしの部分が最初(A)と同じ長さであるならば3部形式である.

12.コーダ
2部あるいは3部形式の後の,さらに数小節の終結部分(曲によって)をいう.

13.カデンツの第2型(T−>S−>D−>T)
Tは安定.(D,Sへも自由に進める)
Dは不安定,Tへ進む傾向が強い.Sへは進まない.
SはTへもDへも進める.

14.低音位(基本位置と展開位置)
どの音がバスにおかれているかにより低音位がきまる.
バスが根音なら,基本位置.第3音なら第1転回位置.第5音なら第2転回位置. 第1転回位置は,Tに上付で1をつける.以下同じ.
V7なら7が下付で,1が上付となる.

15.DとしてのT2(上付)V
バスの属音(V)の上に形成される第2転回位置のT(T2)は,基本位置のV(V7) と合体して(T2V)一個のD和音としてもちいられる.(ソドミ−>ソシレファ)

16.SとしてのU
W以外にもSとしてのUがもちいられる.
カデンツの第3型には,頻繁にUがもちいられる.
T−>S(U)−>D(T2+V7)−>Tの形も多い.

17.主音の保続音(ホ)
一定の長さにわたりバスに主音(T)が保続され,その間たとえ上部にT以外の和音が 聞こえてもかまわない.保続音のうえに形成されるのはV7が多い.

18.非和声音のつづき
(1)倚音と掛留音
刺しゅう音は2個の同一の和声音の中間に挟まれた隣接音であるが, 最初の和声音がはぶかれて,いきなり隣接音から始まるならば倚音(イ)と呼ばれる.
倚音は、ふつう強拍または拍の強部に置かれる.
もし倚音が前の和音からタイで延長されているならば,倚音とは呼ばずに稽留音(ケ) と呼ぶ.
(2)逸音と先取音
刺しゅう音のあとの方の和声音がはぶかれた場合である.
逸音(ツ)は弱拍または拍の弱部でもちいられる.
逸音が和音の中でもう一度打ち直されるならば,先取音(セ)と呼ばれる.

19.近親調
ある調(主調)からみてとくに関係の深い調を,その調の近親調という.
(1)平行調 調号が同じである長調と短調とは,相互に平行調と呼ばれる.
(2)属調  主調の主音の完全5度上の音を主音とする調.
(3)下属調 主調の主音の完全5度下の音を主音とする同旋法の調.
(4)属調の平行調(属平行調) 例えば,ハ長調に対してホ短調(ト長調の平行調)
(5)下属調の平行調(下属平行調) 例えば,ハ長調に対してニ短調
これらは,主調から見て,調号が同じか,一つ違いの調である.(+−#,+−♭)

20.同主調(同名調)
主音が同じである長調と短調とは相互に同主調(同名調)とよぶ.ハ長調とハ短調.
近親調と同じく関係が深いが調号が違うので一応近親調には含めない.

21.転調
(1)転調
曲の途中で調が変わることをいう.
3部形式の中段で転調することは非常に多い.
(2)調の見分け方.
同じ調号のままで転調することが多いので,臨時記号で転調を見分ける. 臨時記号で半音高められた音は,たいてい新しい調の導音(Z)と考えて良い. 臨時記号で半音ひくめられた音は,判定が難しいが,近親調の範囲に限れば たいてい下属調への転調(低められた音は下属調のW)を意味する.
(3)転調を意味しない臨時記号.
例えば,下方の刺しゅう音.(半音高められる)
半音階的な経過音.
臨時記号があっても,もしそれが非和声音であるならば転調の決め手とはいえない. 臨時記号の音が和声音ならば,大体において転調と考えて良い.
(短調の導音は例外.借用和音,変質和音も例外)
(4)臨時記号を用いない転調
平行調への転調.
短調からその平行調へ転調する場合には,転調しても臨時記号が現れない. 短調ならばつくはずの導音(Z)に臨時記号がついてないことによってわかる. イ短調の導音である嬰ト音に#がついてなければハ長調になっていることになる. (導音が出現しないときはわかりにくいが) 2部形式の前段の終わりの部分で転調する例も多い.

22.複合3部形式.
ある程度以上の長さをもつ曲では,しばしば複合3部形式がもちいられる. 3部形式の各部がさらに単純2部,単純3部形式から成っている. この形式は,メヌエットやガボットなどの舞曲に応用されることが多い. ダ・カーポの形式はたいてい複合3部形式であり,中間部分がトリオと呼ばれる.
(ex.ボッケリーニのメヌエット:A(a+b+c)+B(a+b+c)+A(a+b+c))
他に,A(a+b+c)+B(a+b)+C(a+b+c) ,A(a+b)+B(a+b+c)+C(a+b)

23.TとしてのY
Tだけでなく,YもT和音として用いられることがある. 安定性はTよりおとる.

24.各種のD和音
X,X7の他に
(1)X9の和音
根音から数えて9度の音を積み重ねるとV9の和音ができる. 9の和音はXの上にだけできる.

(2)X9の和音の根音省略形体
V9の和音は,しばしば根音(X)を省くことが多い. V9のVに斜線(/)を入れて表記する.(図を参照)
(3)X7の和音の根音省略形体
X7も根音省略形体がある.やはりXに斜線(/)をいれる.

25.各種のS和音.
U7の和音,W7の和音

26.終止(和声の句とう点)
(1)全終止と半終止.
終止というのは「和声の段落点」であって,文章の句読点に当たる. 前のフレーズでXで終わり,後半でX−>Tで終わる事が多い.
前が半終止,後が全終止.
半終止と全終止を組み合わせるとほどよいコントラストになる.
(2)偽終止.
X−>Tのかわりに,X−>Wで終わる.偽終止も全終止と組み合わせる事が多い.
(3)変終止.
W−>Tで終わる.全終止で一旦曲が完結した後,付けたりのように変終止を用いる.
(4)ピカルディーのT(+T)
短調の曲の最後のTが,第3音を半音高められて長3和音となる.

27.非和声音のおぎない
(1)連続非和声音
6,18参照のこと
上部と下部の非和声音が連続してもちいられることがある.これを言う.どちらが先でも良い
連続刺しゅう音(連シ),連続倚音(連イと略記)という種類がある.
稽留音と倚音が連続することもある
(2)非和声音に対する非和声音
刺しゅう音に対する刺しゅう音(シ/シ),経過音に対する刺しゅう音(カ/シ)
(3)非和声音をふくむ分散和音
分散和音の中には,ときどき非和声音が含まれることがある.

28.ロンド形式
(1)ロンド形式
  A X A Y A Z A ...(X,Y,Z,etcは副主題)
(2)大ロンド形式
  A B A C A B A
;小ロンド形式
  A B A C A
(3)大ロンド形式と複合3部形式との違い
複合3部形式 (A B A) C (A B A)
大ロンド形式  A B A  C  A B A
よく似ている.おおまかには,ロンド形式のほうが軽快.複合3部形式は C が長い
ロンド形式は,ソナタ形式の終楽章,複合3部形式は,緩徐楽章に用いられやすい.

29.ソナタ形式
骨格は,複合3部形式
 {A+B=提示部}+{C=展開部}+{A+B=再現部}
(1)提示部
A(第1主題)とB(第2主題)
Aは,主調,Bは長調では属調(短調では平行調) Aの後半は移行部(転調的) があることが多い
(2)展開部
提示部の中の素材を活用している,不安定な動的性格(転調的)
(3)再現部
Bの部分が主調のままである,そのためAの移行部も多少変わる
最後にコーダを伴うことがある

30.ソナタ形式分析の要領
1)まず提示部の終わりを探す.反復記号の付いた複縦線が目印.
2)再現部の初めを探す.展開部以後はじめて主調で第1主題が現れる.
3)提示部と再現部を比較する.後半が提示部では属調か平行調.再現部では主調.
4)提示部・再現部ともに前半から後半へいく前に経過的な移行部がある
注:提示部では,移行部は多くの場合転調的

31.借用和音

他の調の和音を借用する
(1)各音度の調
ハ長調では
Uの和音は,ニ短調. Vの和音は,ホ短調 W.ヘ長調 X.ト長調 Y.イ短調 
(Z.減三和音なので調はない) これらは,近親調である
短調,例えばイ短調では,U.減三和音なのでないが,後はある.
(2)副X(各音度の調のX)
たとえば,ハ長調で,Wのまえにヘ長調のX7をいれることができる
記号は 上に小さいW 下にX (↑W↓X7)
7の和音及び,9の和音の根音省略形が多い
(3)準固有和音(同主短調からの借用)
いつでも同主短調から借用できる
準固有和音はいつでも,構成音中にふくまれるY音が臨時記号により半音低められている. 小さい 。を前に,下にではなく中央につける 。Xなど
短調では同主長調からの借用はない.

32.Sとしてのv/V(前項参照)
(1)Sとしてのv/V
v/Vが主調の内部で,UやWと同格のS和音としてカデンツ(第2型)のなかに組み込まれうる
(2)v/Vの諸形体
v/V v/V7  v/V7k(kは根音省略形のつもり,記号は図を参照)
v/V9 v/V9k 準固有和音 。v/V9  。v/V9k 
(3)v/V7 :U7のなかのW音(短調ならY音も)を半音高めるとv/V7に変わる
(4)v/Vk :W のなかのW音(短調ならY音も)を半音高めるとv/V7k変わる
(5)v/V9k:W7のなかのW音(短調ならY音も)を半音高めるとv/V9k変わる
(6)。v/V9k:長調のv/V9kの第9音を半音低めると,。v/V9kに変わる

33.v/Vの和音の下方偏位(kv/V)  ;kは下方偏位の記号の代わり(図を参照)

(1)v/V和音の下方偏位(kv/V)
v/V諸和音の第5音(Y)を半音低めることができる.長調では,いつでも第5音に臨時記号(半音下行) がつくが,短調では,第5音は音階固有の音(固有音)のままである
kv/Vはv/Vと同様,S和音である
(2)kv/V7 v/V7の第5音(Y)を半音低めると,kv/V7である
(3)kv/V7k v/V7kの第5音(Y)を半音低めると,kv/V7kになる
(4)kv/V9k(。kv/V9k)
 v/V9k(。v/V9k)の第5音(Y)を半音低めると,kv/V9k(。kv/V9k)になる

34.ナポリのU(−U)
短調のUの根音を半音低めた和音をナポリのUとよび,−Uと記す.S和音である.

35.ドリアのW(+W)
短調のWの第3和音(Y)を半音高めた和音をドリアのWとよび,+Wと記す.S和音である


36.X和音の上方偏位(jX) jは上方変位記号の代わり(図を参照)
Xの諸和音の第5音(U)を半音高めることができる.これをXの和音の上方変位といい,jXと記す.
D和音であり,もっぱら長調でのみ用いられる

37.各音度の5度関連
7度の音度上に形成される和音は,根音から順次に5度下行(4度上行)する関係で, 連続的に用いられることが多い.(T−>W−>Z−>V−>Y−>U−>X−>T)
一般に,ZやVはこのような関連以外には,用いられることが少ない

38.偶成和音
(1)偶成和音
非和声音によって偶然成立した和音.以下の(2),(3),(4)がそうである
(2)刺しゅう和音
(3)倚和音
(4)経過和音

39.主音上のX
全終止のTの部分には,しばしばバスの主音の上にX7,X7k ,X9kなどがあらわれる. 常に,後続するTと合体して全体として一個のT和音を形成する

40.属音の保続音(17.参照のこと)
属音の保続音も多い

41.変奏曲
(1)変奏
同じ旋律が繰り返される事に少しずつ変形されていく
変奏は旋律の機械的なくりかえしから生ずる退屈をさけるために有効
(2)変奏曲
変奏の手法が全曲にわたって応用し出来ている曲が変奏曲である
主題が奏されてのち,つぎつぎに変奏する(第一変奏,第二変奏・・・)

42.ソナタ形式のまとめ
A 移 B ; 展 A 移 B(;は繰り返し)
これが基本形でS1とすると,
S2, A 移 B ; 展  B(再現部でAを欠く)
S3, A 移 B ; A 移 B(展開部を欠く)

43.ロンド形式のまとめ
(1)大ロンド形式(大R)
これが一番多い.A B A C A B A
(2)小ロンド形式(小R)
A B A C A
(3)ロンドソナタ形式(RS)
大ロンド形式にソナタ形式の特徴を加えたもの
 提示部    中間部  再現部
A(移)B A  C  A (移)B A
   属調(平行調)      主調
Aがソナタ形式における第1主題,Bが第2主題,Cが中間部として展開部の代わり

44.楽曲としてのソナタ
(1)楽曲名としてのソナタ
ピアノ・ソナタは楽曲名で,ソナタ形式という言葉と同じではない
「ソナタ」は,2〜4個の楽章からなる
「ソナチネ」は小規模に作られたソナタ
(2)ソナタの楽章の4種の型(楽章型)
(a)主楽章型:快速な楽章.ソナタ形式,たいていは第1楽章
(b)緩徐楽章型:ゆっくり,形式は色々,たいていは第2楽章
(c)舞曲楽章型:メヌエットまたはスケルツォ.形式はトリオを持つダ・カーポの複合3部形式
(d)終楽章型:軽快な楽章,ロンド形式またはソナタ形式が多い
(3)ソナタにおける楽章型の組み合わせ
4楽章ソナタ:a,b,c,d(a,c,b,dとc,bが入れ替わることあり)
3楽章ソナタ:a,b,d(a,c,d)
2楽章ソナタ:a,d(稀にa,c あるいは a,b)

45.各種演奏形式におけるソナタ
ピアノソナタはピアノのために書かれた「ソナタ」であり,交響曲は管弦楽のために書かれた 「ソナタ」である,室内楽曲,協奏曲もそれぞれの楽器のための「ソナタ」である

おわり  2003/11/28