線に内在する力に戻る
カンディンスキー 点・線・面 西田秀穂訳 美術出版社
序
作品は彼岸に存在し、刺激がなくなると、跡片もなく、意識の表面から
その姿を消す。芸術の場合にも、ある種の透きとおった堅い厚板ガラス
があって、直接的・内面的な接触を不可能にするのだ。だがこの場合に
も、作品の中へ入り込み、その中で動き、その鼓動を、あらゆる
感覚をもって体験する可能性はある。
P56
点から、新しい存在が生まれる。独立した新しい生活を営む。つまり
自己個有の法則にしたがうところの一つの存在。それが線なのである。
P59
ほとんど一般化している「運動」なる概念の代わりに、私は「緊張」
という言葉を用いたい。「緊張」とは要素に内在するーただし創造的な
「運動」の一部を意味するにすぎぬー力のこと。別の一部を形作るのは、
これもまた「運動」によって規定される「方向」。そこで絵画の要素は、
運動の現実態として
1、緊張と
2、方向とを
プラスして出来る形態にある。
P163
「浮動する感じ」は、前述の諸条件のみによって起こるのではなく、
観者の眼が、、、つまり観者の内面的態度如何にも懸かっている、
したがって、十分に習熟していない眼(このことは、心とも有機的な関連がある)
が、奥行きを感じることができないのは、その眼が、あの定義しがたい空間を
捉えるために、物質的平面から自己を開放することができぬゆえんであろう。
これに反して、適切に訓練された眼は、作品にとって必要な平面を平面として
みる、と同時に、平面が空間形態を取る場合には、平面から眼を転じるという、
二様の能力を具備しているにちがいない。
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