バドガール、その四(あらら!)
用語解説:イタリア人の生バンド:バドワイザーカーニバルの名物。
男性1人、女性1人のペア。二人とも美形。
歌は、70年代の洋楽(好)が中心。
リーダー:アル中。
久枝ちゃん:オアシス。
様々な紆余曲折を経て開催された
バドワイザーカーニバルも、OPENから早1ヶ月を
むかえました。
今日もお店は満員御礼。
そのうち、9割が男性客です(当然)。
そして私達は、今日も繰り返します。
「いらっしゃいませ(笑顔)、バドワイザーカーニバルへようこそ(はーと)」
(あー、今日脇剃ってくるの忘れたぁ)
「ありがとうございます(チラリ)またお越し下さいませ(ポロリ)」
(胸パットずれてるよ〜やべーー)
毎日毎日
履きなれてない15センチヒールで
右手にピッチャー2個(約4kg)
左手に大皿2枚(こぼれそう)
腕も足も、がくがくぶるぶる。
なのに表情は、運動会でお遊戯する小学生のような笑顔…。
布1枚の服を着ているとはいえ、スポットライトとお客さんの熱気で
店は熱い熱い…(屋上なのに)
体中から汗がにじみ出てきます。
ハンパじゃありません。
お客さんもみんな、汗だくです。
こんなに辛かったとは…
こんなに苦しかったとは…
ぶっちゃけ、時給1300円では割に合いません!
そんな苦境にも、
今日だけは笑顔で応える事が出来るのです★
だって……
だって今日は……
花火大会の日なんだもの★★★!!
花火大会には行けなかったものの
私達が働いている、このスーパーのビルの屋上は
本日行われる花火見学の
おすすめスポットだとか。
友達から事前に聞いておりました。
うひょーー!
ドキドキです!!
期待大です★★★
バイトしながら花火が拝めるなんて!
人ごみを掻き分けながら見るより
よっぽど楽しそう。
よーし、頑張るぞ^0^
そうこうしているうちに、時刻は7時を
まわりました。
軽快なKeybordの音とともに、
生バンドの女性ボーカルのウェルカムが聞こえてきます♪
生バンド
それは、このカーニバルの名物のひとつ。
太陽の国から来日した美形伊太利亜人の二人が
一時間ごとに、ステージに登場して
生の歌声を聞かせてくれるのです!
お客さんのリクエストに答える他、
持ち歌として
セプテンバーやら、ダンシングクイーンなんかも歌ってくれるので
実は70年代の★ディスコソング★が大好き★★
な私は、
もう彼らに夢中でした。
今日も仕事の合間に耳を傾けると
…お、聞こえてきた聞こえてきた♪
どうやら、リクエストに応えて
郷ヒロミの曲を歌っているようですね!!
[
「アーチーチーアーチー♪」
「フンフフーフーフーフー(ハミング)」
アチチしか知らないのかよ!
断れよ!知らないなら!!
そんな無言のツッコミには全く動じず、
彼らは今日も、演奏を終えた後の
サイドビジネスにいそしんでいます。
CD−Rに焼いた自分達のオリジナルCDを
お客さんに売りまくり。
1枚1000円で(高!)
CD−Rなんて、100円あれば買えますよ!?
とか何とか言ってたら…
あらら!!
ほっぺにチューですか!?
おやおや!!!!
お客さんの膝の上に座って接客ですか!?
さすが、情熱の国イタリア。
やる事が違います。
おじさん…ちんこたってます…(涙)
さてさて、そんなもの何時までも見てるわけにはいかないので
さっさと接客に戻りますよ。
…と、その時突然
「ひゅるるるるる〜〜〜〜パーン」
すぐ傍で花火の音が!!
はっと見上げると
目の前には
暗闇に咲く、大輪の花。
やったーーーー!!!^0^^0^!
花火があがりました!!
こんなに綺麗だとは!!
こんなにはっきりと見れるとは!!
花火の音が、大きく響きます。
心まで、届きそうです。
あーー、疲れが癒される…
まさに、この言葉の通りです。
爆弾ではなく、花火が普通に楽しめる時代に生まれて
よかった…
感動です。
溢れ出そうになる(嘘)涙を抑えつつ
必死に接客を続けます。
お客さんの中からも、次々に歓声が。
みんな、感動してるんだね!!
感動を共有してるんだね!!
なんか嬉しい!!
私:「ピッチャー、お持ちしました〜〜♪」
お客A:「おい!どいてくれ!」
お客:B「ちょっと邪魔!」
えっ!!(驚)
お客C:「お姉さーん、そこに立ってたら花火みえないー」
見られてナンボのこの商売。
それが、今や前を通っただけで邪魔者扱い。
しかも、どこのポジションにいても
あらゆる角度のお客様から「どいて」の声が…
お客C:「お姉さーん、花火みえないー」
お客D:「ヤキソバ追加ねー。」
お客E:「どいてって。マジで。」
あわわ…
あわわ…
あわわ(泣)…
おっぱい、お尻、
さらけ出す必要性まるで無し。
それじゃあ、私達がこんな格好をしている意味は…
私達の存在意味は…
アイデンティティが崩壊寸前です。
その時突然……
…………………………
…………………………
…………………………
………電気が消えました。
店中の、電気という電気がすべて。
「何?何!!?」
ざわめきだすお客さま。
何がおこったの!!?
お客F「いい演出だねーー!」
お客G「暗いからよく花火が見えるわ!」
いや、演出じゃないから!!
停電だから。
っていうか、ガス付かなし!
冷蔵庫、止まっちゃってるし!!
ど…ど…どうしたらいいの!!!?(汗)
ざわめきたつお客さんを掻き分けて
キッチンへ
「リーダー!!お店の電気が……!!」
リーダー、枝豆わしずかみ。
ピッチャー空けまくり。
いやいやいや(ツッコミ)
おいおいおい(ツッコミ)
電気が止まってしまった今、
お客様に出せる料理といえば
作りおきのサラダと枝豆くらい。
その枝豆を、リーダーが
わし掴みにしています!!
もう…
ちーん……(合掌)
です。
5につづくのです。