玉島港沿岸の潮位と津波の高さについて

---------------最終更新日:2013.9.16
玉島港沿岸部の潮位と南海トラフの巨大地震による津波の想定高さについて整理してみました。


まず、岡山県内唯一の詳細な潮位情報が得られる観測地点「宇野」についての気象庁潮位表 宇野サイト潮位表の解説
玉島の潮位情報は、海上保安庁の「平均水面、最高水面及び最低水面一覧表」岡山県総合防災情報(携帯)の数値(TP/CDL)をもとにT.P.へ換算しました。

宇野及び玉島、水島の観測点の情報(潮位表掲載地点一覧表2012年

番号
地点記号
掲載地点名
経度
(北緯)
経度
(東経)
MSL
潮位表基準面
(cm)
MSL
の標高
(cm)
潮位表基準面
の標高
(cm)
観測基準面
の標高
(cm)
115
UN
宇野
34°29’
133°57’
140.0
17.1
-122.9
-171.6
-
-
玉島
34°31’
133°40’
200.0
18
-182
116
MM
水島
34°32’ 133°44’
190.0
7
-183※1
標高への換算値は、2012年1月1日現在のものです。
MSL(Mean Sea Level 平均潮位)には、2006年〜2010年の5か年平均潮位を用いています。
※1 岡山県総合防災情報(携帯)の数値(TP/CDL)では-173、観測地点間の差か?

図で示すと下図のようになります。
 ●宇野の平均潮位は東京湾平均海面(T.P.)より17.1cm高い。
 ●宇野の大潮の平均的な満潮面の標高(海抜)はT.P.+157.1(17.1+140)cm。
  これに比べ、内湾に海水が閉じこめられやすい玉島港では、T.P.+218(18+200)cmとさらに60cmほど高い。


次に、津波の高さとは?

気象庁の解説ページによると「津波の高さ」とは、津波がない場合の潮位(平常潮位)から、津波によって海面が上昇したその高さの差を言います。 とある。
つまり相対的な値であり、そのときの本来の海水面からどれだけ高いかを示している。
津波の到達する高さ(海抜)は潮の満ち干によって、変化する。
これとは異なり、南海トラフの被害想定では津波最大波高はT.P.からの高さ(海抜)で表されている。(参照 津波断層モデル編 ー津波断層モデルと津波高・浸水域等についてー 13ページ)

例えば2.8mの津波が想定(平成25年3月22岡山県が発表した玉野市の津波浸水想定)された場合、宇野では平均的な大潮の満潮時より約1.2m(2.8-1.571)高い津波ということになる。

玉島港沿岸の大潮の平均的な満潮面がT.P.+2.18m、つまり海抜2.18mであるから、3.2mの津波を想定した場合、大潮の満潮面より更に約1.0m高いということになる。


2012年3月には、南海トラフの巨大地震モデル検討会が「南海トラフの巨大地震による震度分布・津波高について(第一次報告)」を発表した。
同年8月29日「南海トラフの巨大地震に関する津波高第二次報告、浸水域、被害想定次報告を発表。
3月の第一次報告が震度分布・津波高(50mメッシュ)であったのに対し、第二次報告では10mメッシュのより微細な地形変化を反映したデータを用いた推計結果が示された。

●市町村別ケース別 最大津波高/m(満潮位・地殻変動考慮)
都道府県名
市区町村名
ケース1
ケース2
ケース3
ケース4
ケース5
ケース6
ケース7
ケース8
ケース9
ケース10
ケース11
最大値
中央防災会議(2003)
第一次
報告
岡山県
倉敷市
3.0
3.1
3.2
3.2
3.2
3.0
3.1
3.1
3.1
3.2
3.2
3.2
3.1
第二次
報告
岡山県
倉敷市
3
4
4
3
3
3
4
4
3
3
3
4
←少数第2位を四捨五入し、
小数第1位を切り上げた数字

この値はT.P.(東京湾平均海面)からの高さによって表示(参照 津波断層モデル編 ー津波断層モデルと津波高・浸水域等についてー 13ページ)されており、最大で高さ(海抜)4mの津波が想定されている。
第二次報告での津波の数値、例えば4mはシミュレーションの結果の数値が3.05〜4.04999・・・であったことになる。
まあ、大きめの数字として出した方が・・・というのが震災後の流れ、なのか?

この国のモデルを使い、2013年3月22日岡山県が更に詳細な地形データを加えた津波浸水想定では、倉敷市の最大波高3.2mとなっている。

 関係市 
 最大津波高(m)
 平均津波高(m)
倉敷市
3.2
2.8


倉敷市は2012年中に浸水予想地域の主要道路に海抜表示板300箇所、2012年度内に避難所案内標識55箇所を設置の予定。
海抜表示板の数値とこの3.2mという数値を見比べて、その場所の潜在的危険性を確認しておきましょう。
海抜表示板に2.2mの表示がある地点では、地面より1m高い津波が襲ってくる可能性があることを示しています。

 →勇崎・柏島地区 防災情報マップに海抜表示板を追加しました。

消防団員のぐち(長いです。 しかもかなり根に持っています。)

消防団員が防災関連の番組を見ておりました。(平成24年9月)
とある自主防災組織がマンホールの蓋の海抜を基準に、簡単な測定器のみで2、3週間で詳細な海抜表示のある防災マップを作ったのを知りました。
「これじゃ! レーザーポインター付きの水平器、コンベックス、下げ振り、三脚でいける! よっしゃー!」と喜びました。
ネットで調べると、東京都を始め多くの地方自治体がネット上で下水道台帳を公開していました。
倉敷市はネットでは公開していないので、さっそく倉敷市の環境リサイクル局下水道部下水建設課にメールしました。
「下水道台帳の閲覧およびコピーは本庁8F下水建設課、各支所建設課下水道係で対応しています。」との返信に、さっそく玉島支所へ行ったのでした。
ところが担当者がいうには「個人宅付近の数点なら可能ですが、地域全体でというのは前例がないので対応しかねます。」
とのことで詳細な海抜表示ありの防災マップ作りは夢と消えましたとさ。
裏から手を回そうと、防災関係の部署にもメールをしたけどだめだったんじゃそうな。いけんのう。

わずかに1cmの高低差があれば水は低いところに流れ、よどむ。
メッシュのでかい浸水ハザードマップ、津波ハザードマップではわからない土地の高低差。
国土地理院の精密基盤標高地図でさえ1mの等高線間隔、しかも彩色が非常に見にくい。
浸水を経験した人間からすると、ミリメートル単位で計測された詳細な海抜データポイントが道路に点々と存在しているにもかかわらず、それを防災に利用できないというのは、宝の持ち腐れとしか思えない。 
憤りさえ感じる。こっぱ役人が!

まあ、海抜表示板はあったほうがいい。おれ的には0.1メートル単位では精度低すぎ。基準に使えない。数が少なすぎ。

追記(平成25年3月1日)
岡山県危機管理課のサイトから「標高がわかるWeb地図(国土地理院のサイト)」を試してみた。
結論から言うと、まあまあ使える。だが防災目的など人命に関わる場合の基礎データとしては信頼性が低い。
日記

追記2(平成25年6月30日)
海抜(標高)を正確に知る方法についてページ作成。

追記3(平成25年9月16日)
世界各国、そして日本政府の方向性も自治体が抱え込んでいる宝の持ち腐れデータのオープン化へ向かっている。
電子行政オープンデータ、ガバメント2.0の実現には、まだまだ時間がかかりそうだ。

●市町村別ケース別 津波到達時間(津波高+1m)(単位:分)
都道府県名
市区町村名
ケース1
ケース2
ケース3
ケース4
ケース5
ケース6
ケース7
ケース8
ケース9
ケース10
ケース11
最短時間
第二次報告
岡山県
倉敷市
288
480
432
-
213
481
480
478
303
-
-
213

ついでに津波到達時間の推定値も。
3mあるいは4mの津波が想定されているにもかかわらず、1mの津波到達時間しかデータがないのか不明。


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