醤油屋絵日記(2004/平成16年版 不定期更新)
もうとにかくホームページに載せるネタが尽きたので、徒然なるままに、日記でも書こうかということで、平成16年版です。
平成16年4月19日(月曜日/雨)
あいにくの雨の中、春の仕込み開始。今年も米国産IP醸造用脱脂大豆100%使用(あいぴー?)、小麦は県内産シラサギコムギとチクゴイズミ混合。煎って砕いた小麦と蒸した大豆を広げたところ。(写真A)
不思議と今季の仕込みは、機器のトラブルもなくなめらかな出だしです。毎年こうあって欲しい。いや、こうでなくては。あさって21日朝には、麹ができあがる。
平成16年4月20日(火曜日/晴れ)
朝っぱらから、ボイラー注水時、寝ぼけてオーバーフローさせてしましました。ぐすん。
だって4時間しかねてないんだもん。重労働+睡眠不足=ダメダメ。まけるもんか!
平成16年4月21日(水曜日/晴れ)
今シーズン初めての麹ができました。よい感じでございます。(写真B)
平成16年4月26日(月曜日/晴れ後曇り後雨)
今シーズンから、麹の温度管理を任される。責任重大。
先週のように夏のような日(最高気温28℃)があるかと思えば、一転春先に戻ったような冷え込みがあり、麹の温度管理は難しい。上がりすぎー。冷えすぎてるー。等の悪夢で目覚める回数が増えた。
今日も昼飯ヌキで13時間以上働きづめ。 いやー、毎度の事ながら、良いダイエットになるなー。年間の体重変化のデータをとってみようかな。
平成16年5月1日(土曜日/曇り)
本日より仕込みの中休み。製麹装置に麹が入っていないと、こんなにも精神的に楽かとしみじみ感じる。安心して寝ることができる。
平成16年5月19日(水曜日/雨)
連休明けから仕込み再開、のはずが、ボイラーの蒸気漏れ等々でやっと本日19日から再開。いま麹の温度30℃。
先週あたりから、昨年秋仕込んだもろみの発酵が始まった。オーブンで焼くケーキのように盛り上がってくる。今シーズンはこの様子をデジカメで撮影してみたい。
平成16年5月25日(火曜日/快晴)
今日はデジカメでマクロ撮影を試みました。できあがった麹でございます。
カビカビにかびているのでございます。(写真C)
平成16年5月30日(日曜日/曇り)
昨日中国地方は梅雨入り宣言。今シーズン最後の盛り込みも終わり、一段落。明日の出麹で仕込みは終了。マクロ撮影画像をそこここに配置してみました。煎り小麦。 割砕小麦。 麦&豆。 麹。
平成16年6月2日(水曜日/晴)
日曜日梅雨入り宣言したものの、昨日今日と晴天。しかも、今週中は雨はなさそうです。
仕込み終了後も体は朝4時半には起きてしまいます。いま朝5時過ぎです。すがすがしい朝でございます。これから夏にかけては温度上昇に伴い、もろみの発酵が進むため、櫂(かい)でもろみを混ぜてやる必要があります。
今日は小麦を煎る前と煎った後の比較をマクロ撮影してみました。小麦。
平成16年6月17日(木曜日/快晴)
毎年恒例の玉島南小学校2年生の”まちかどたんけん”が来た。せいかつ科の勉強で、地域の会社に行って、見たいものを見まくり、聞きたいことを聞きまくるという実学精神にあふれた企画だ。
しょうゆの原料の小麦、脱脂大豆、しお、コウジカビを見せ、説明する。
「カビを見たことあるひとー。」
「はーい、おふろばにたくさんいます。」
「....そうなの? 黒いやつ? そーいう悪いカビも多いけど、このカビはとっても役立つカビなんだ。」
「小麦見たことありますかー。」
「はーい。」
「じゃあ、小麦からなにができますかー。」
「おこめー」
「...ちょっとちがうかな。みんなが給食で食べるパンとかスパゲッティは小麦を粉にした小麦粉で作るんだぞー。」
もろみを寝かした年数でどのように色や香り味が変わるのか、実際に味見してもらう。
「じゃ、実際に食べてみてください。」
「うおー。しょっぺー。」
「これうめー。」
「違いがわかるかな。」
「すっぱー。」
「これかれー。」
「においはどうかな。」
「おれにもおれにも。」
甘みを加えて、火入れした後の大樽いっぱいのしょうゆを見てもらい、これも味見。
「どうだ、さっきのもろみと比べて。」
「うっめー。」
「おーいしー。」
「はらへってきたー。」
(ふふふ、してやったり。)
「うめー。ぺろぺろ。うめー。ぺろぺろ。うめーーー。ぺろぺろ。」
「おい。もうそのくらいに....。あとでおみやげあげるから。」
「やったー。」「ちょうだい。ちょうだい。」「あたしも。あたしも。」
暑い中、付き添いの父兄の方々、ご苦労様でした。こいつらをいつも仕切っている先生方、ご苦労様です。
デジカメをポケットに入れたまま、撮影をする暇もないほど、にぎやかでございました。
平成16年6月27日(日曜日/雨のちくもり)
”もろみの変化をデジカメで一月おきに撮ってみよう作戦”始動。
構想1日、完成までに3年を要する一大プロジェクトだ!
平成16年6月29日(火曜日/曇り時々晴れ)
先日やって来た玉島南小学校の2年生からお礼状(写真D)が届く。
「しょうゆをなめたらおいしかったです。」
「いいあじでしたよ。」 ●...お、お褒めにあずかり、恐縮でございます。
「みたらしだんごのにおいがいっぱいしました。」
「とうふにかけてたべました。」
「くやしくおしえてもらってわたしはうれしかったです。」 ●くやしく教えてしまったか...。
「しょうゆをつくるのはむずかしんだなーとおもいました。」 ●うんうん。
「いいにおいがくんくんにおいました。」 ●さすが2年生!
「私わしょう油はこういうふうなものからつくるのだなとか思いました。」
「カビでしょうゆをつくっているなんて、はじめて知りました。」
「しょうゆのきかいが大きかったのでびっくりしました。」
「しょうゆやさんてすごいですね。」 ●ふふっ、2年生にしては、人を見る目があるな。
「しょうゆがでてくるところを見ておなかがすいてきました。」
「しょうゆをしぼるとこがすごかったです。」
●おぢさんもたいへんべんきょうになりました。らいねんもきてくらさい。 にしやましょうゆてんより。
平成16年7月11日(日曜日/晴れ)
梅雨が明けました。暑い日々が続いております。
平成16年7月18日(日曜日/曇り)
このところの猛暑で、もろみの発酵がどんどん進んでいます。
”もろみの変化をデジカメで一月おきに撮ってみよう作戦”では変化が早すぎるため、
急遽一週間おきの画像をまとめて”もろみの夏休み絵日記”としてまとめることにしました。
平成16年7月25日(日曜日/曇り時々晴れ)
猛暑です。連日最高気温30℃以上、最低気温25℃以上の真夏日&熱帯夜の日々が続いています。
一方、岡山県産の桃は日照時間に恵まれて出来が非常に良く、糖度十分で当たり年らしいです。
微生物の活動も活発になり、もろみの発酵、熟成が日に日に進み、色が濃くなってきています。
”もろみの夏休み絵日記(以後もろ夏日記と表記)”&”もろみの変化をデジカメで一月おきに撮ってみよう作戦(以後もろ月作戦と表記)”みておくれ。
平成16年8月1日(日曜日/雨)
台風10号がきた。久々のまとまった雨で庭木や畑の野菜も息を吹き返したようです。
平成16年8月8日(日曜日/曇り)
昨年の冷夏とはうってかわって、暑い夏になっています。今日は玉島花火大会、屋根に登って、デジカメと望遠レンズでがんばろうかな。 おっと、ビールとおつまみも忘れないようにしないと。
平成16年8月15日(日曜日/曇り)
昨日14日から17日(火)まで盆休みをいただきます。
今日はもろ夏日記の更新だけです。
平成16年8月22日(日曜日/曇り)
お盆があけた今週は朝夕にそこはかとなく秋の風情が感じられるようになり、日中の最高気温も30℃くらいです。
もろ夏日記更新と一升びんのリユースについてのページにリサイクルを加えました。
平成16年8月29日(日曜日/曇り時々晴れ)
今日は朝から消防団の総合防災訓練です。天気はなんとか保ちそうで、台風16号は明日月曜日に最接近、暴風雨になりそうです。
朝晩の涼しさに秋の声が感じられる今日この頃であります。本日はもろ夏日記ともろ月作戦の更新です。
平成16年8月30日(月曜日/暴風雨)
ここからは日記というか、後書きの記録です。
夜にはいって台風16号の接近に伴い、風雨が強くなってきた。消防団の出動がかかりそうなので、カンテラ、懐中電灯、雨具を準備しておく。
22:00頃召集がかかる。消防車で巡回後、自宅が気になり部長に許可をもらい、ちょっと帰ってみると道の排水路から海水が逆流し、店頭の道路ではくるぶしのあたりまですでに来ていた。まだこの時点では、せいぜい低いところに置いてあるものをかわせばなんとかなると思っており、とりあえず醤油などを移動させる。
しかし、予想に反して水位の上昇が早く、家屋内部でもくるぶしを超えるようになる。水に浸かりつつある会社のパソコン、プリンタを二階に移動させ降りてみると、水位は膝の付近まで上昇していた。
これ以上は危険と判断し、家族を本宅の二階に避難させる。
水圧で戸が開かない。窓から出る。道路では腰の高さにまで水が来ていた。急いで通り向かいの自分が住んでいる家屋にバシャバシャと行ってみると、ちょうど床の高さにまで水が達し、棚が、本が、Macが、ビデオが、衣類が、敷いたふとんが、すべてがだめになりつつあった。躊躇せず下半身ずぶぬれで長靴のまま家に上がる。
下から5cmほど水没していたパソコンからケーブル類をぶち抜き、ぽたぽた水を滴らせながら担いでロフトに運ぶ。ハードディスクさえ助かればデータの復旧はなんとかなる。平屋なんだけど、この時ほどロフトを作っておいてよかったと思ったことはない。
電灯が消える。カンテラを点ける。ショートか? ブレーカーを試すが、復帰せず。おいおい停電かよ。たのむぜ。ほんとにカンテラもっててよかった。家中の乾電池と懐中電灯を探し、水没した道路を横切り、家族に渡しに行く。
静かに、しかし確実に水位は上昇。もう床上10cmは来ている。床おきの目覚まし時計はこの頃に逝ったと思われる。時計1(写真E) カンテラの光を頼りに、低い位置から順に、ロフトにまだ救えそうなものを運んだり、放り上げたり、見捨てたり。
床上30cm。二度と手には入らないもの、失ってはならないものが目の前で水没していくのを見ると、実際笑ってしまう。
しまった、まだあれがあそこに・・・。 あれはやっと手に入れた・・・。 ははっ。 こころがズンと重くなって、ぱきっと割れて、笑ってしまうようだ。 ははは。 運び上げる、運び上げる。汗が目にしみる。水位が上がる、上がる。
ああ、昨日読んでた「ベルセルク」がぷかぷか浮かんでる。 三浦先生ごめんなさい。ああ、「攻殻機動隊1.5」が・・・。士郎先生ごめんなさい。
水位はもう股のあたりに達し、床上50cmくらいか。家電製品の多くが水没、または傾いて浮いており、冷蔵庫の上にあった時計はこの頃に落下、逝ったものと思われる。時計2(写真F)
緊急時のために買い置きしていたペットボトル入りの水を思い出し、水から引き上げ、がぶ飲みする。窓から外を照らしてみると、緩やかに動く黒い水面から庭木が頭をぽこぽこ出している。大切にしていたサンセベリアやアロエは完全に水没して見えない。
あとの家具や棚にあるものは諦める。汗と水で全身びっしょりだ。仕込み用の胸まであるゴム長を思い出し、倉庫まで取りに行く。道路は川のようになり、水位は胸元にまで達していた。倉庫の戸は半分はずれて、流されかかっていた。中は・・・。
目的のゴム長は、待ってたと言わんばかりに、ぷかぷか浮いていた。中に入った水を逆さまにして出しながら持ち帰る。ロフトに上がる梯子の途中にかけて水を切り、中をふく。服を脱ぐと尿意を催した。トイレは完全に水没しているので、どうしようかと考えた末、目に入った空のペットボトルにする。とりあえずあり合わせの服を着て、ゴム長を履きカンテラと懐中電灯を頼りに降りる。室内の水位は高止まりしつつあった。(後に計測したところ床上約70cmであった。)
外に出ると、風雨は弱まったようだが、浸水は道路の最も深いところで140cm以上あるようだ。非常用飲料水等思いつくかぎりの必要なものを本宅の二階に避難している家族に届ける。窓から入って、柱やふすまにつかまりながら、浮き上がった不安定な畳の上を歩き、浮遊物をかき分けつつすすむ。
ほぼ0:00の満潮時刻を過ぎれば、水門を開けて排水し、水位は下がるはずだ。それまでの辛抱だと思った。
それまでは消防団員としての任務は果たさねばと近所のお宅の状況を見に行く。胸まである水をかき分けながら、弱い光を頼りにすすむ。坂道の底にあたるうちの近辺が最も深いようだ。 つづく。
平成16年8月31日(火曜日/暴風雨→晴れ)
ご近所の両隣は、登り坂になっているか、路面から家屋までの高さがあるので大丈夫そうだ。しかし、懐中電灯を手に不安そうに玄関先に出ている。とりあえず、「風雨もおさまり、満潮時刻も過ぎたので徐々に水位は下がると思います。」と伝えて、次へ。
遠縁の一人暮らしのおばあさんの家に行く。うちと同じくらいまで水が来ている。戸が閉まって入れない。「おばさん。おばさん。」どんどんたたいても、呼びかけても返事がない。懐中電灯を頭の高さに構え、泳ぐようにして本宅まで合い鍵を取りに行く。
一番深い所だと、つま先立ちで歩いても、胸まであるゴム長の高さよりやや深い。道沿いの塀の上を通り、懐中電灯を口にくわえて、壁のわずかな段差に指を引っかけて体を支え、まるでSASUKEのように最深部を越える。
また窓から入る。早く閉めないと、ぷかぷか浮いている家財道具が流れ出てしまう。本宅の中はなにがなにやら、信じられないようなことになっている。
白い冷蔵庫、洗濯機が斜めになって浮いている。ビン、おぼん、空き缶、パン、段ボール箱、紙、タオル、衣類、お菓子、本、あらゆるものが暗い水面を漂い、或いは底に沈んで歩みを妨げる。畳が浮き上がり、タンスが倒れ、不安定な足場を壁や柱につかまりつつ進む。二階に避難している家族に一声かけてから、鍵を取りに行く。鍵はすべて置き場所が決まっており、目の高さの位置なので、難なく見つかる。漂流物をかき分け、窓から出る。
たった30mほどの距離が長い。壁づたいにまたアクロバチックな移動をして、たどり着く。
不思議と明るい方へ行ってみると、自家用、業務用車両4台とカブ1台が水没している。電気系統がやられたのか、水面下でライトがむなしく点灯している。車の移動のことなど考えもつかなかった。