Jobsのわがままが色濃く表現されていますが、これだけの経営哲学が今の日本の経営者に要求されていると考えるのは、私だけでしょうか?
【Cube誕生秘話】
・ジョブスが自宅の仕事場に置く新しいマックが欲しかったので、アップル社のエンジニアにG4の技術を20センチ四方の立方体に“うるさいファンなしで”詰め込むように命令したのが発端。Cube
をタワー型と差別化するために透明なプラスチックで覆う形にした。そして完璧な製品を作るため金型に注入するための特別な機械を作ったが、製造メーカーはアップル側のあまりにも厳しい完璧主義を求める姿勢にすっかりアップル嫌いになってしまった。
【ジョブスへの独占取材】
・NYのマックエキスポの10日前、これから発表される製品群を独占取材させて貰えることになった。ジョブスが短パンにTシャツ姿で現れ、アップルの役員室へと案内してくれた。そこには新しいキーボード、マウス、iMac、Cubeがあった。ジョブスは「奇麗だろ?これは我々が作った中で一番美しい製品だ!」と赤ちゃんを自慢する父親のようにまくし立てた。「これはスゴイね!」と反応したもののジョブスにはまだこれら製品の本当のすごさを理解していないと思えたらしく次の日も呼ばれた。
・ビル・ゲイツは、アップルはコンピュータに色をつけたことで業界をリードしているがPCが追いつくのも時間の問題だと言っている。またジェフ・ラスキンでさえもアップルは人々から愛され、そこそこの影響力を持ち続けるだろうがトップメーカーにはなれない、と考えている。しかしながらジョブスはアップルはこれからも成長し続け、かなりの利益をあげていくであろうと主張している。
・ジョブスは研究開発費を現時点では上げる必要はないと考えている。来年には上げる可能性もあるが、目の前にある目標を実現するためにはあと2〜3年かかるであろうし、新しい研究開発に力を入れるのはその後。大部分のスタッフは一年以内のリリースを目標にプロジェクトに携わっている。
・ジョブスによると現在アップルは手のひらサイズのインターネット端末に取り掛かっており、来年にはお目見えするかもしれない。
・ジョブスはデスクトップムービーはDTPよりも市場が大きいと思っており、「ホームビデオを作りたい人とニューズレターを作りたい人はどちらが多いか、それを考えたら答えは明白だ」と言った。
・アップルはシェアを3.8%から6%まで回復させることに成功したが、役員達は今は5年以内に10%まで持っていきたいを考えている。
・アップルはCubeを一年間で80万台売りたいと計画しているが、アナリストは楽観的すぎるとアップルの数字を批判している。
・アップルは今後もビジネス市場には参入しない。コスト意識が強すぎて、デザインや使いやすさといった付加価値で勝負しているアップルには合わない。
【流通改革】
・以前、アップルの倉庫には70日分の不良在庫があり、業界最悪だった。ジョブスはすぐに改革に取り組み、全商品の半分に当たる量をより効率的に製造できるメーカーに外注した。
・98年初頭には在庫量が半減したがジョブスは満足せず、デルよりも効率的な経営を目指してコンパックのティモシー・クックを雇った。辣腕のクックでさえも怯んでしまうほど当時のアップルの流通網は非効率的で、部品会社・製造会社・卸問屋が回路図のように入り組んでいた。部品供給メーカーはいつも部品の配達に日数がかかっていたので、5色のマックを出そうものなら悪夢になるのが目に見えていた。
・クックはすぐに改革に着手し、10以上の倉庫をすぐ閉鎖した。「洋服ダンスがあると洋服をしまってしまうだろう。それと同じことさ。とにかく簡素化してスピードアップしなければならなかった」
・それから部品供給メーカーを100社以上あったものを24社に減らし、アップルは各メーカーに対してより強い影響力を持ち、またより安く部品を作らせることが出来るようになった。そして、これらの構造改革は非常にうまくいった。
・クックの一番の業績は在庫量を一日以下にコントロールすることに成功し、業界トップクラスの経営効率をもたらしたことである。それは部品メーカーの事務所を工場のすぐ側に作らせ、ジャストインタイムで部品を納入できる体制を整えたことが大きい。
・納入の遅い部品メーカーと縁を切るようにジョブスに命令されたが、「契約違反で訴えられる」と反対したところ、「訴訟なんてクソ食らえだ!我々に楯突くならもう一切取引しない」とジョブスが言うので、その部品メーカーとの取引を中止したら案の定訴えられてその交渉担当者が首になった。ジョブスの指示に従っても失敗した場合に割を食うのは担当者である。ジョブスが舵取りするようになってから結果が全てになり、非常に厳しい評価にさらされるようになった。
・殆ど全ての重要な決定は月曜朝の役員会議で決定される。また会議中は株価を上げるか、競争に生き残るかということは一切議題に出ず、ひたすら製品に関しての議論が行われる。(ルビンシュタイン談)
・アップルには多くのベンダーが戻ってきている。例えばマウスメーカーのロジテックはマック用製品はほとんどなかったが、今ではほとんどの製品がマックに対応しているし、MSもオフィスの新しいバージョンを発表し、マックコミュニティーは活発化している。
・しかし不安材料もいくつかある。多くのアナリストはMac
OS Xは一月のリリースには間に合わないと予測していること。また、売り上げを伸ばすには販売店不足かもしれないと分析。(3年前は2万店だった販売店も、今は1万1千店程度)
・財務担当のアンダーソンによるとジョブスを心から微笑ませた製品は二つあるそうだ。一つはiMac
、もう一つはCube。